少年誌ということもあり、冒険モノ、格闘モノ、ファンタジーのイメージが強い『週刊少年ジャンプ』
しかし、中には名作といわれる”推理・サスペンスアクション漫画”も多数誕生している。
今回は、そんなジャンプを影から支え続けている”推理・サスペンスアクション漫画”中から、週刊少年ジャンプのおすすめ名作漫画を紹介。
紹介するほとんどのものが電子書籍化・文庫化されており、今では気軽に読むことができるので、興味があったら是非とも読んでみてはいかがだろうか。
- 『闇の逃亡医』
- 『灰になる少年』
- 『CAT'S EYE』
- 『シティーハンター』
- 『暗闇をぶっとばせ!』
- 『MIND ASSASSIN』
- 『人形草紙 あやつり左近』
- 『DEATH NOTE』
- 『魔人探偵脳噛ネウロ』
- 『THE COMIQ』
『闇の逃亡医』
作者 | 加藤唯史/高山よしの |
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連載期間 | 1977年7号~1977年30号 |
巻数 | 全2巻 |
極秘裏に新抗ガン剤「キロイド」の臨床治験で患者がモルモットがわりにされていたのだ!
この事実を突き止めた若き医師・倉石は、何者かの手により殺害され・・・。
病院を舞台にしたサスペンス漫画。

正義感溢れる主人公・渡が、自身が務める病院の闇を明らかにしていく・・・というもの。
まるで”火曜サスペンス”のような世界観で、まさに”大人のための少年漫画”であった。
小難しい言葉や、グロテスクな描写もその世界観をより引き立て、いつの間にか作品に惹き込まれてしまうはずだ。
後半になるにつれて、少々早足になってしまうが、二転三転していく展開は最後まで楽しめることだろう。
病院の闇というよりも、”大人の闇”を垣間見ることができる”名作”となっている。
- 火曜サスペンスのような大人の世界観
- 決して諦めない正義感溢れる、気持ちのいい主人公に注目!
『灰になる少年』
作者 | ジョージ秋山 |
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連載期間 | 1973年39号~1973年49号 |
巻数 | 全1巻 |
次々と起こる出来事に不安と疑念はふくらみ、やがて恐ろしい真実が…!?
衝撃的な作品を世に送り出すことで有名なジョージ秋山先生の描く恐怖物語。

謎の男の一言によって、大好きだったパパやママがだんだんと異形の存在にみえてきて、次第に信じられる味方がいなくなっていく・・・という、子供の恐怖心を上手くとらえた作品であった。
毎回、子供にトラウマを与える描写とストーリーを描くジョージ秋山先生であったが、その多くは、読者の期待を上げるだけ上げて、”投げっぱなし”で終わることが多かったのも事実・・・。
しかし、この『灰になる少年』は、珍しく(?)起承転結がしっかりと整っており、ジョージ秋山作品の中でも屈指の”名作サスペンスホラー”と言っていいだろう。
果たして、少年の見ていたものとは何だったのか・・・是非ともご自身で読み、その結末に驚いて頂きたいものだ。
- 子供の恐怖心を煽る衝撃のストーリー!
- ジョージ秋山先生、屈指の名作短編
『CAT'S EYE』
作者 | 北条司 |
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連載期間 | 1981年40号~1984年44号 |
巻数 | 全18巻 |
刑事・内海俊夫は、いつもキャッツアイの逮捕に失敗し、上司に怒鳴られ、左遷の危機にもあった。
そんな俊夫の恋人で、俊夫の勤務する署の前でこの盗賊と全く同じ店名の喫茶店を営む来生瞳は、いつも俊夫の愚痴を聞いては叱咤激励している。
だが、瞳ら来生三姉妹こそ、キャッツアイの正体だった・・・。
北条司先生の連載デビュー作にして、一躍人気漫画家へと駆け上がることとなった怪盗サスペンスアクション漫画である。

キャッツアイと聞くと、”怪盗漫画”というイメージが強いかもしれないが、どちらかというと警察官である”俊夫”と三姉妹の人間関係を描いたドラマが比重を占めている。
怪盗どうこうを楽しむというより、警察官の俊夫に正体がバレるかバレないか・・・と、ドキドキしながら読むのが、この漫画の正しい楽しみ方なのかもしれない。
そのため、毎回、あっという間に品物を盗み出すキャッツアイたちの活躍自体には物足りなさも感じることだろう、しかし、その点は、美人三姉妹のセクシーなレオタード姿でカバー。
そうこうしながら読み進めていると、いつの間にやら、彼女たちに心をスッカリ盗み取られて、夢中になってしまっているはずだ。
ちなみに、今ではお決まりのようになっている”女性の怪盗=レオタード”というイメージを作り出したのがこの漫画である。
- 必ず虜に!美人三姉妹(キャッツアイ)の活躍!
- 俊夫との人間関係に注目
『シティーハンター』
作者 | 北条司 |
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連載期間 | 1985年13号~1991年50号 |
巻数 | 全35巻 |
ボディーガードから、殺しまで手広く請け負うが、依頼は美女絡みか、依頼人の本音に「心が震えた時」しか受けない。
今は亡き親友の妹、槇村香をパートナーに病んだ都会の闇に蠢く悪を撃つ!!
新宿で殺し・ボディーガード・探偵等を請け負うスイーパー『シティーハンター』の活躍を描いている。

この作品が長きに渡り、支持されている理由は、なんといっても”主人公・冴羽獠”のキャラクターだろう。
普段はスケベで情けない冴羽獠であるが、いざというときは、スイーパーとして本領を発揮する・・・というギャップはまさに男も惚れる男。
初期の頃は、ハードボイルドすぎる作風からか、なかなか人気が上がらない漫画であったが、徐々にコメディ色を強め、冴羽獠の性格が崩れ始めると、重苦しいストーリーの中に、明るさを感じさせてくれ、読みやすくなっていった印象がある。
更には、海坊主や冴子といった魅力的なキャラクターが次々と登場し、ストーリーに厚みを持たせてくれていた。
正直なところ、同じような話が繰り返し展開されていくのだが、飽きずに話を読み進めていけたのは、冴羽獠や脇を固める魅力的なキャラクターがあってのことだったのだろう。
- ”男も惚れる”冴羽獠のギャップ
- 魅力的なキャラクターたち
『暗闇をぶっとばせ!』
作者 | 今泉伸二/宮崎博文 |
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連載期間 | 1994年2号~1994年16号 |
巻数 | 全2巻 |
担当していた暴走族の誰かの仕業に違いないとがむしゃらに犯人探しをする隼人だったが、父親殺しの嫌疑がかけられ警察に追われる身に…!!
はたして隼人は警察の手を逃れ、汚名を晴らすことができるのか!?
1980年代の頃のジャンプに多かった刑事モノ漫画。

1話目からとにかく展開が早く、1話目の時点で事件の犯人が明らかになるのだ。
これには、ずっと謎のまま話を進め、読者に犯人捜しをさせるよりも、犯人を最初の段階で明らかにし、犯人がわかりながらも太刀打ちできずに、警察から逃げ回る隼人の姿を描いたほうが、読者の焦燥感を得られ、より熱中させることができると判断したのだろう。
確かに、この構成方法が上手くいっていて、ストーリーはよくあるものながらも、最後までハラハラして読むことができる。
残念ながら、途中で”打ち切り”が決まってしまったためか、早足になり、満足できずに最後を迎えてしまったのだが、まるで2時間サスペンスをみたような満足感を得られるので興味があったら是非とも読んで頂きたい作品である。
- 2時間サスペンスを見たような満足感
- 最後までハラハラできる上手い構成方法
『MIND ASSASSIN』
作者 | かずはじめ |
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連載期間 | 1994年52号~1995年29号 |
巻数 | 全5巻 |
その特殊能力は、精神と記憶を破壊すること。
奥森かずいは、その力を受け継ぐ日独クォーターの三代目。
虎弥太と二人、医師として暮らす彼の元には、心の傷を抱えた人々が訪れる…。
相手の記憶及び精神を破壊する”マインド・アサシン”の活躍を描いている。

心に傷を負った人物のトラウマを消すことも出来れば、悪事に手を染める犯罪者の精神も破壊する主人公の活躍と苦悩のようなものを描いた漫画であった。
余計な描写が省かれたシンプルな絵や、時折、背景を真っ白に描く描写は、何か冷たい空気を感じさせ、心温まるストーリーの中にも”冷徹さ”、光と闇を感じるような絶妙な空気感を併せ持っていた。
その空気感がより一層、物語に没入させてくれるのだろう。
淡々と描かれる話の数々は、果たして、救いのない話なのか、救いのある話なのか、どちらともつかない話なのか・・・・読み手がどう解釈するかで変わっていく物語は是非とも一読して頂きたいものである。
- 人間の”心に踏み込む”人間ドラマ
- 独特の冷たい空気感
『人形草紙 あやつり左近』
作者 | 小畑健/写楽麿 |
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連載期間 | 1995年23号~1996年1号 |
巻数 | 全4巻 |
そして、右近を操る文楽人形師の人間国宝・橘左衛門の孫・左近!!
二人は不可解な事件へと巻きこまれていくが、左近の鋭い洞察力が謎を解きあかす!!
他誌の推理漫画ブームに乗ろうと”ジャンプ”が送り出した意欲作であった。

他誌では、『金田一少年』『名探偵コナン』といった推理漫画が人気になっており、これに続けとばかりにジャンプが生み出した”推理漫画”。
他誌との遅れを取り戻すためにも『何か目を惹く、斬新な設定をつける』ことが必要となっていたのだろう。
そのため、”腹話術師””喋る人形”というよくわからない設定をチョイスした結果、確かに目を惹いたのだが、”人形を操る左近”の異様さばかりが気になり、事件や謎解きが一切頭に入ってことないという悲しい結果を生み出していた。
自分では、この”異様さ”が可愛くてしょうがないのだが、世間の目は厳しかったようである。
内容は決して悪いものではなく、小畑健のどこか不気味な画風は世界観を引き立て、斬新なトリックはよくできていたが・・・・。
この作品をどう評価するかは、是非ともご一読をして頂きたいものだ。
- ”斬新”な主人公の設定
- 小畑健が描き出す不気味な世界観
『DEATH NOTE』
作者 | 小畑健/大場つぐみ |
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連載期間 | 2004年1号~2006年24号 |
巻数 | 全12巻 |
死神 リュークが人間界に落とした一冊のノート「DEATH NOTE」
ここから、二人の選ばれし者「夜神月」と「L」の壮絶な戦いが始まる!!
”デスノート”という名前を書かれた者が必ず死んでしまうノートを巡る、Lと月の頭脳戦を描いた推理サスペンス。

不思議な道具を手に入れたら…というストーリーの導入は子供向け漫画のようなライトな入り方だが、実際には設定やストーリーが緻密に作りこまれており、子供から大人まで楽しめる漫画となっている。
通常ならば、自身を追い詰めてくる”L”の名前も書いて終了となるが、そのLは本名が明かされておらず、デスノートに名前を書くことができない・・・。
そして、Lはいろいろな方法を使って、徐々に夜神月を追い詰めていくことになる・・・という、こういった思いもよらない発想や、想像がつかないストーリー展開が読者を夢中にさせてくれるのだろう。
ちなみに、デスノートは108話で終わっており、単行本は全部で13巻となっている。
108は人間の煩悩の数であり、13という数は西洋では不吉とされている数字・・・。
この辺りからも、非常に細部にまでこだわって作成された漫画ということがわかる。
- 緻密に作り込まれたストーリー
- Lと月の想像がつかない頭脳戦
『魔人探偵脳噛ネウロ』
作者 | 松井優征 |
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連載期間 | 2005年12号~2009年21号 |
巻数 | 全23巻 |
密室の惨殺事件、謎に満ちた事件は弥子の日常を混乱へ…。
一向に捜査が進展しない中、悲しみにくれる弥子の前に脳噛ネウロと名乗る男が現れた。
彼は言う、究極の『謎』を解きたいと…!!
推理ミステリーというジャンルをユーモアに描いたまさに”怪作”であった。

”推理”にプラスして、ファンタジー要素やブラックユーモアを加えることで、今までにないような推理ミステリー漫画となっていた。
主人公であるネウロ自身が「謎」の解明にしか興味がないようで、他のミステリー漫画にありがちな、犯人の”犯行動機”や”独白”といったダレがちな部分がまったく描かれないところが個人的には好きなポイントだった。
ただし、本格的な”推理ミステリー”漫画としては、ムチャクチャ、さらに読者側に犯人に繋がるヒントは一切出ず、ネウロ自身も能力を使い事件を解決する・・・という、かなり掟破りな作品であるので、コナンや金田一のようなものを期待して読んではいけないだろう。
作者自身も「推理物の皮を被った単純娯楽漫画」と言っているほどなので、ミステリーを楽しむというより、あくまで”ブラックユーモア”や”犯人の異常性”を楽しむ漫画だと思ってもらいたい。
- ブラックユーモア満載、今までにない推理ミステリー漫画
- 犯人の人智を超えた異常性
『THE COMIQ』
作者 | 高橋和希 |
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連載期間 | 2018年46号~2018年52号 |
巻数 | 全1巻 |
解決したはずのその事件だが、真犯人はまだ捕まっていなかった!
新人漫画家と獄中アシスタントによる奇妙なコンビが真相を解き明かす超本格ミステリー!!
高橋和希先生の”週刊少年ジャンプ創刊50周年記念”の短期集中連載漫画であった。

”漫画”を通して3年前に起こった殺人事件を解決していく・・・という斬新な推理のスタイルだった。
もともと短期集中連載ということもあり、事件への導入もスムーズで、テンポが良く、非常に読みやすくなっていた。
少々無理くりな部分もあるものの、推理サスペンスといっても難解な部分はないため、こういったジャンルが苦手な方でもサクッと読めることだろう。
ちなみに高橋先生は、この漫画を”ipad”のみで制作したそうだ。
- 1巻完結!サクッと読める
- ipadのみにも関わらず、高いクオリティ
最後に・・・
以上、『週刊少年ジャンプのおすすめ”推理・サスペンスアクション漫画”を紹介!』であった。
どれも読みごたえのある作品ばかりなので、是非とも読んで頂きたい。
昔よりも、読者層の年齢が比較的若くなってしまっているので、今では難しいのかもしれないが、またジャンプでも刑事ものや、ハードボイルドものをやって欲しいものだ。